働く女性のキャリア不安を『自信』に変える心のOS──ロンドン発・AI時代を生き抜くヒント|藤田怜子(Mindful Career Partner)

働く女性が抱えるキャリア不安と藤田怜子の挑戦

AIの進化と働き方の多様化が加速する現代社会。

「このままでいいのだろうか」。

「子育てとキャリアを、どう両立すればいいの?」――。

多くの女性が抱える、言葉にできない漠然とした不安。そんな問いに、ロンドンを拠点とするグローバルビジネス&キャリアコンサルタント、藤田怜子さんが、自身の経験に基づく独自のメソッド「心のOSアップデート」で答え続けています。

ゴールドマン・サックス、ロレアル、LVMHグループを渡り歩いた華やかな経歴の裏で、彼女は何に悩み、いかにして乗り越えてきたのでしょう。なぜ、一見するとキャリアとは無関係に見える「心のOS」というテーマにたどり着いたのでしょう。

日本マイクロソフトとの協業も実現し、今最も注目される女性起業家の一人、藤田怜子さんに話を聞きました。

Interview by CHIE H MARKS (文・取材)

目次

藤田怜子(Mindful Career Partner代表)のプロフィール

藤田怜子のプロフィール写真|働く女性のキャリア不安を自信に変える「心のOSアップデート」

金融からLVMHへ──17年にわたるグローバルキャリアの軌跡

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券、仏ロレアルグループ、LVMHグループにて要職を歴任。17年間にわたり華々しいグローバルキャリアを築いた。

家族帯同とアイデンティティ・ロスから学んだ「完璧を手放す」転機

しかし、2023年家族の海外駐在に帯同するため4度目となるロンドンへの渡英を経験。家事・育児に専念する中でアイデンティティ・ロスを経験したことを機に、「完璧な自分」を手放すことを決意する。

キャリアメンター®として働く女性の自己効力感を支援

自身の経験を活かし、キャリアに悩むすべての女性をサポートするため、2024年に起業。BCMA認定キャリアメンター®、JAFA認定マインドフルネスコンサルタントの資格を活かし、働く女性の内なる力と可能性を引き出すサポートを行っている。

ロンドン在住・2児の母としてのライフスタイル

東京(港区・新宿区・江東区)を拠点に暮らした経験を持ち、現在はロンドン在住で2児の母。帰国後は東京都での活動を予定。日課は、散歩や入浴の一人時間で心身を整えること。趣味は音楽を聴きながらカフェで過ごすことや、気の合う友人と美味しいごはんを楽しむこと。

より詳しい経歴や活動実績は、公式サイトのプロフィールページでご覧いただけます。
👉 藤田怜子(Mindful Career Partner代表)プロフィールはこちら

ゴールドマン・サックスでの挑戦とキャリアの壁

輝かしいキャリアの始まりと、最初の“見えない壁”

怜子さんの華やかなキャリアは、多くの女性の憧れです。まずは、ゴールドマン・サックスに入社された当時のことをお聞かせください。

入社は、まさに未知の世界への挑戦でした。金融という厳格な環境で、求められるスピードと正確性、責任の重さは想像をはるかに超え、連日の激務に自身の限界と向き合う日々でした。繁忙期には帰宅しても壁に寄りかかって1時間だけ仮眠し、また翌朝出社することもありました。その中で 「まずやってみる」「変化を恐れず適応する」 というプロフェッショナルとしての揺るぎない姿勢が自然と身につきました。

しかし、極限の毎日で、気づいたのです。仕事のスキルを磨くだけでなく、「自分らしく働くとはどういうことか」 を深く模索したい、と。この問いが、その後の私のキャリアを方向づける羅針盤となりました。

ロレアルからLVMHへ──キャリアの大きな転機

―世界最高峰の知の源泉で鍛えられた頭脳をお持ちなのですね。その後、ロレアルグループ、LVMHグループへと転職されますが、どのような経緯だったのでしょうか。

「もっと自分らしさを追求したい」という思いからの転身

ゴールドマン・サックスでのやりがいは大きかったのですが、同時に「もっと自分らしさを追求したい」という思いも膨らんでいました。金融の世界で経験を重ねながらも、「これが本当に自分らしい働き方なのか」という迷いが募っていきました。

数字の世界からクリエイティブへ──マーケティング職への挑戦

金融という数字の世界から、もっとクリエイティブで、人々の心を動かす仕事がしたい。そう考えた私は、ロレアルグループのマーケティング職へ転身しました。
数字で成果を測る金融業界から、ブランドや顧客の感情に寄り添うマーケティングへの挑戦は、私にとってキャリアの大きなターニングポイントでした。

LVMHグループで経営に携わり、広がった視野

その後、17年間で様々なブランドや海外赴任を経験し、ラグジュアリーブランドの世界観に魅了され、LVMHグループに参画。マーケティングディレクター、そして経営委員会メンバーとして、20年を超えるキャリアを積み重ねました。

管理職への昇進と、仕事と育児の両立に直面した葛藤

―順風満帆に見えるご経歴ですが、その陰には葛藤もあったと伺いました。

若くして昇進、年上部下を前に直面した最初の壁

もちろんです。29歳で管理職に昇進した際、部下のほとんどが年上で経験も知識も豊富な方ばかり。完璧な上司であろうと努めて行き詰まり、周りを上手に頼ることを学んだのが、最初の壁でした。
その後も、キャリアの節目ごとに「このままでいいのだろうか」という漠然とした不安に幾度となく襲われました。

最大の難関──仕事と育児の両立

最大の難関は、仕事と育児の両立でした。仕事も育児も100点を目指して奮闘し、心身のバランスを崩すこともありました。
子どもの発熱で仕事を休むたびに「私はキャリアを諦めるべきなのだろうか」と自問自答し、すべてが中途半端に思えて自信を失いかけていました。

藤田怜子の人生とキャリアの転機を描いた幸福度グラフ|幼少期のロンドン生活から出産・起業までのストーリー

「心のOSアップデート」の原点はイギリスでの経験にあった

ロンドンの赤い電話ボックス前で撮影した藤田怜子|心のOSアップデートの原点となったイギリスでの経験

怜子さんの提唱する「心のOSアップデート」の根幹には、イギリスでのご経験があると伺いました。具体的にはどのようなものでしょうか。

12歳で渡英、「何もできない自分」との出会い

私のキャリアの土台は12歳の時、父親の駐在で渡英した経験にあります。言葉も文化も異なる環境で、「何もできない自分」に直面し、自己肯定感はほぼゼロでした。

イギリスの教育がもたらした気づき

そんな私に変化をもたらしたのが、現地の教育です。劇作家シェイクスピアの授業では、英語が分からず戸惑う私に、先生が塗り絵を渡してくれました。
当時は屈辱的に思っていましたが、そこで大切な気づきがありました。

個人を尊重する教育文化との出会い

イギリスの教育は、日本のように他者と比較するのではなく、個人の成長や特性を尊重する文化が根付いています。先生方は一人ひとりの長所を見つけ、とことん褒めてくれるのです。
小さな成功体験が積み重なるうちに、「自分は自分でいいんだ」という感覚を自然と育むことができました。

子育てを通じて改めて感じる教育の力

現在も、イギリスで2人の子どもを育てていますが、子どもの面談を通じても同じ傾向を感じ取ることができます。
この経験こそが、私の「心の羅針盤」となり、キャリア支援を行う上での揺るがない原点となっています。

日本とイギリスの社会制度が生む「女性の働き方」の違い

―イギリスと日本では、女性の働き方に対する社会の姿勢にも大きな違いがあると感じられたのではないでしょうか。

日本に根強い「母親だから頑張らなくては」という思い込み

その違いはとても顕著です。日本では「母親だから頑張らなくては」と自分に言い聞かせ、家事も育児も仕事も完璧にこなそうとする女性が多いです。
私自身もその価値観に影響され、常に「もっと頑張らなければ」という思いに駆られ、満たされない感覚や葛藤を抱えていました。

イギリスに根付く「誰もが挑戦していい」という空気感

イギリスでは育児や家事が「女性の責任」という前提ではなく、夫婦で分担しながら、それぞれが自分らしい働き方を選ぶことが一般的です。
さらに「柔軟な勤務形態の希望権利」や「ジョブシェアリング」など、ライフイベントに左右されずにキャリアを継続できる制度も整備されています。

このような社会全体で「誰もが挑戦していい」という前向きな空気感が、女性たちの挑戦力を育んでいると感じます。私も、この空気感に背中を押され、自分らしい働き方や新しい挑戦に踏み出すことができました。

日本とイギリスの柔軟な働き方に関する制度比較表|働き方の権利・ジョブシェアリング・生涯学習の違い

社外メンターとの出会いがもたらした「完璧を手放す」転機

―怜子さんご自身が、完璧を手放すきっかけになった出来事はありますか。

「シャンパンタワーの法則」との出会い

キャリアの葛藤の中で出会った社外メンターの存在が、私を救ってくれました。
彼女が教えてくれたのは、「シャンパンタワーの法則」です。「一番上のグラス(自分)が満たされて初めて、下のグラス(家族や仕事)にシャンパンが注がれるのです」。それまでの私は、自分を犠牲にして周りを満たそうとしていました。

シャンパンタワーの法則を示す図解|まず自分を満たしてこそ家族や仕事も満たされるキャリアの考え方

自分を大切にする生き方へシフト

しかし、この言葉を聞いたとき、「まず自分を満たすこと」が、結果的に周りの人たちも幸せにするという視点を得ることができました。
この瞬間から、私は完璧を手放し
自分を大切にする生き方を選びました。
それが、挑戦を続けるための土台となっています。

日本の女性活躍に残る壁と「心のOSアップデート」の必要性

―多くの女性が「完璧」を手放せずにいる日本の現状について、どのように見ていらっしゃいますか。

日本の女性管理職比率は約15.5%(2022年)、性別賃金格差は約22.0%(2023年)と、OECD平均と比べても大きな隔たりがあります。
しかし、私はこの現状を「伸びしろ」だと前向きに捉えています。

キャリアを諦めてしまう要因は、スキル不足だけではありません。「自分には無理かもしれない」という心理的なハードルや、他者の期待に応えようとする「他人軸」の生き方こそが、最大の壁になっているのです。

私自身、2023年に家族の帯同でロンドンに4度目の駐在をすることになり、長年築いてきたキャリアを一度手放しました。
そこで辛いアイデンティティ・ロスから痛感したのは、環境や制度だけでなく、自分の内側にある「心のOS」を見直す必要性だったのです。

起業の原点──「自分の経験が誰かの力になるはず」

働く女性のキャリア支援を目指し起業した藤田怜子|自分の経験が誰かの力になると信じた原点

―2024年に起業されたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

起業のきっかけは、帯同での渡英後、セカンドキャリアを模索していた時期にあります。自己分析を重ねる中で、私のやりがいは「人や社会のためになること」だと気づき、キャリアの苦しい時期に支えてくれた社外メンターを思い出し、「自分の経験が誰かの力になるはず」と確信しました。

ロンドンでは起業家やフリーランスとして活動する人が多く、異国で制約のある自分にも可能性があると背中を押されました。
さらに、イギリスの女性たちが肩の力を抜いて自分らしく働く姿に触れ、この価値観を日本の女性たちにも届けたいと思うようになったのです。

環境や状況が変わっても、自分らしい選択ができる――その背中をそっと押すこと。
一人ひとりの心に寄り添い、前に進むための「心の灯り」を点す伴走者でありたい。
それが、私の起業の原点です。

「心のOSアップデート」とは?──自己効力感を育む新しいアプローチ

―「心のOSアップデート」とは、具体的にどのようなアプローチなのでしょうか。

スマートフォンもOSが古いままだと新しいアプリがうまく動かないように、私たちの「心のOS」もアップデートしなければ、昔の思い込みにとらわれて不安が生まれてしまいます。

「心のOSアップデート」とは、私たちの無意識に組み込まれた価値観や思考の癖、感情の反応パターンを見直し、今の自分に合った状態へ書き換えるアプローチです。古いOSのままだと、過去の経験に基づいた思い込みで失敗を過度に恐れ、自信を失い、挑戦の一歩を止めてしまうことがあります。

そこで、スキルや知識の習得の前に、まず「私はできる」という自己効力感を育むことに重きを置いています。マインドフルネスや心理カウンセリングの知見を取り入れ、自己肯定感を高め、「自分には目標を達成する力がある」と信じられる自己効力感を育みます。

さらに自分の強みや価値観を見つけ、小さな成功体験を積み重ねることで、どんな環境や転機の中でも、自分らしく挑戦を続け、可能性を広げていくための強固な土台となります。

心のOSアップデートの図解|他人軸や完璧主義から、自分軸・不完全さの受容・自己効力感へと変化するプロセス

👉 「心のOSアップデート」プログラムでは、多くの方が“漠然とした不安”を“自信”に変えてきました。受講者のリアルな声や変化も掲載しています。講座の詳細はこちら

日本マイクロソフトとの協業──「心のOSアップデート」が選ばれた理由

―2025年には日本マイクロソフトとの協業も実現されていますね。大企業がこのプログラムに共鳴した理由は、何だとお考えですか。

日本マイクロソフトが推進する「Code; Without Barriers in Japan」は、多様な人材の再挑戦を後押しし、社会課題の解決を目指す取り組みです。
私のプログラムに共鳴してくださったのは、単なる
スキルや知識の伝達ではなく、一人ひとりの内面と向き合い、自分を信じて挑戦できる「心の土台」を育む点に価値を感じていただけたからだと思います。

素晴らしい制度や仕組みがどれだけ整っても、最後に変化を起こすのは私たち一人ひとりです。
働く女性が「自分にはできる」と心から信じ、一歩を踏み出すことで、素晴らしい仕組みも初めて十分に機能します。

キャリアの迷いや不安を感じている方々にとって、「心のOS」をアップデートすることは、スキルや知識を学ぶ以前に、自分らしく持続的に挑戦し、可能性を広げていくための揺るがない原動力になると信じています。

👉 日本マイクロソフトが推進する取り組みについてはこちら(弊社のロゴも公式サイトに掲載いただいています)

子育てはキャリアの妨げではなく「自己開発の機会」

―藤田さんにとって、子育てはキャリアの妨げではなく「自己開発の機会」だと捉えているそうですね。

はい。子育てはキャリアを止めるものではなく、私を成長させる大きな機会でした。もちろん、思い通りにいかないことや葛藤もありましたが、限られた時間の中で優先順位をつける力や、柔軟に対応する力が磨かれました。

完璧を目指すのではなく、「今できるベスト」を積み重ねるという考え方は、仕事にも大きく活きています。こうした経験が、挑戦する女性たちに寄り添う今の活動にもつながっています。

キャリアに悩む女性たちへ──藤田怜子からのメッセージ

働く女性へ向けた藤田怜子のエンパワーメントメッセージ|キャリアの不安を自信に変える心のOSアップデート

―最後に、キャリアに悩む女性たちに一番伝えたいことは何でしょうか。

「悩んでいるのは、あなただけではありません」。
まず、そうお伝えしたいです。転機や新しい挑戦には常に不安が伴いますが、その不安を乗り越えた先に、「転機は好機」へと変わる瞬間があります。

大切なのは、モヤモヤを抱えたままにせず言語化し、自分の本当の気持ちを安心して開示できる場を持つことです。環境が変わらなくても、心の持ちようで未来は変えられます。

あなたはすでに十分頑張っています。どうか自分を信じて、一歩を踏み出してください。

働く女性のキャリア不安を行動に変える3つのヒント|藤田怜子の心のOSアップデート

👉 もしこの記事を読んで、
「少し話してみたい」「自分のキャリアを整理したい」
そう思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。

私自身も、かつて社外メンターとの出会いによって考え方が変わり、完璧を手放して自分らしく歩み出すことができました。
誰かに安心して話せるだけで、モヤモヤが整理され、強みや次の一歩が見えてくることがあります。

あなたが自分を信じて前に進むための、その最初の一歩を一緒に見つけられたら嬉しいです。

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Mindful Career Partner 公式サイト

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